古代都市アレッポのスークとは?世界最古級の巨大市場、その栄光と戦火の歴史
中東・シリア北部に存在する古都、アレッポ。
この街を語る上で欠かせない存在が、
「スーク(市場)」です。
迷路のように入り組んだ石造りの通路、
香辛料の香り、銅細工の音、
絨毯や石鹸を売る店々――。
かつてアレッポのスークは、
「世界でもっとも美しい市場のひとつ」
とも呼ばれました。
しかし近年、その姿は戦火によって
大きく傷つくことになります。
今回は、古代都市アレッポの象徴
「スーク」の歴史と魅力に迫ります。
そもそも「スーク」とは?
「スーク(Souq)」とは、
アラビア語で“市場”を意味する言葉です。
中東世界では古くから、
• 香辛料
• 絹
• 宝石
• 武器
• 香水
• 食料品
などを扱う巨大市場が都市の中心に形成されてきました。
日本でいう「商店街」に近い存在ですが、
規模も歴史も桁違い。
その中でも、
アレッポのスークは世界屈指の歴史をもつ
市場として知られていました。
シルクロードの重要拠点だったアレッポ
アレッポは、
古代から東西交易の要衝として繁栄してきました。
中国から続くシルクロードの商品が、
• ペルシア
• アラビア
• 地中海世界
• ヨーロッパ
へ運ばれる中継地点だったのです。
特に中世以降、
アレッポはオスマン帝国の重要都市となり、
世界中の商人が集まりました。
ヴェネツィア商人やヨーロッパ商館も存在し、
「東洋と西洋が交差する都市」
として黄金時代を迎えます。
世界最大級だった「アレッポのスーク」
アレッポ旧市街のスークは、
総延長13km以上とも言われる巨大市場でした。
石造りのアーチ状天井に覆われた通路が複雑に広がり、
• 香辛料街
• 金細工街
• 布市場
• 石鹸市場
など、職業ごとに区域が分かれていたのが特徴です。
特に有名だったのが「石鹸」。
オリーブオイルとローレルオイルを使った伝統石鹸で、
世界最古級の石鹸とも言われています。
現在でも日本で「アレッポの石鹸」として知られており、
この市場から世界へ広まりました。
十字軍も欲した豊かな都市
中世ヨーロッパにとって、
アレッポは“憧れの東方世界”でした。
十字軍時代には、
この豊かな交易都市を巡って争奪戦も起こっています。
市場には、
• インドの香辛料
• 中国の絹
• ペルシア絨毯
• アラビア香料
などが並び、
当時のヨーロッパ人にはまさに夢の都市だったのです。
しかし2011年以降、
シリア内戦によって、
アレッポは激戦地となります。
2012年、
歴史的スークの大部分が火災と戦闘で破壊されました。
何百年も続いた石造りの市場は崩れ、
多くの店や文化財が失われたのです。
この光景は世界に衝撃を与えました。
現在、
ユネスコなどの支援もあり、
アレッポ旧市街では少しずつ復興作業が進められています。
焼け残った石畳を修復し、
再び店を開く人々も現れています。
それは単なる市場再建ではなく、
「人類の歴史そのものを取り戻す作業」
なのかもしれません。
かつて“文明の交差点”だった
アレッポのスークは、
単なる商業施設ではありませんでした。
そこには、
• 東西交易
• 宗教
• 異文化交流
• シルクロード
• 職人文化
といった、
人類史そのものが詰まっていました。
戦争によって失われたものは大きい。
しかし、
数千年続いてきたこの市場の歴史は、
今も完全には消えていません。
アレッポのスークは、
「文明とは何か」を静かに語り続けているのです。
参考文献
• 佐藤次高『イスラーム世界の興隆』中央公論新社
• 小杉泰『イスラーム文明とは何か』講談社学術文庫
• UNESCO World Heritage Centre
• Ross Burns, Aleppo: A History
• Philip Mansel, Aleppo: The Rise and Fall of Syria’s Great Merchant City

